『真実』ネタバレあらすじ&感想!クスッと笑える是枝監督のコメディー映画

『真実』個人的評価★4.0点(5点満点)

是枝監督の最新作『真実』を見てきました!

万引き家族』でパルムドームを受賞。さらに、今作はヴェネチア国際映画祭のオープニング作品として公開され、名実ともに世界的監督となった是枝さん。

 

世界からも期待されている是枝監督の最新作『真実』をネタバレ有で、あらすじや感想をまとめていきます。

『真実』あらすじ

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フランスの国民的大女優ファビエンヌが自伝本「真実」を出版し、それを祝うためという理由で、アメリカに暮らす脚本家の娘リュミールが、夫でテレビ俳優のハンクや娘のシャルロットを連れて母のもとを訪れる。

早速、母の自伝を読んだリュミールだったが、そこにはありもしないエピソードが書かれており、憤慨した彼女は母を問いただすが、ファビエンヌは意に介さない。

しかし、その自伝をきっかけに、母と娘の間に隠されていた愛憎渦巻く真実が次第に明らかになっていく。

映画.comより一部引用https://eiga.com/movie/89504/

 

『真実』監督・キャスト

■監督…是枝裕和

万引き家族』で世界的に注目をあびた是枝監督。『真実』の情報が解禁になった時「次はフランスで制作!?しかも出演者めちゃくちゃ豪華じゃん!」と公開前からワクワクしていました。

 

■出演者

ファビエンヌ・ダジュヴィル…カトリーヌ・ドヌーヴ

リュミール…ジュリエット・ビノシュ

ハンク・クーパー…イーサン・ホーク

アンナ・ルロワ…リュディヴィーヌ・サニエ

シャルロット…クレモンティーヌグルニエ

 

とんどもなく豪華なメンツが揃っています。

元々はジュリエット・ヴィノシュと是枝監督が「今度一緒に作りましょう」と話していて、それがようやく実現したのが今作だそう。

 

イーサン・ホークは是枝監督から『万引き家族』がカンヌ受賞後に声をかけられたそうで、彼は「このタイミングなら断れないよね(笑)」とこの役を受けたそうです。

是枝監督が世界でも認められている証拠ですね!

 

とにかくキャスト陣の演技は全員素晴らしかったです!

子役演技も本当に良かった!国は違えど、さすが是枝監督…!と感動しました。そもそもあの子役が上手なんでしょうけど(笑)。

『真実』ネタバレあらすじ

フランス・パリに住む大女優のファビエンヌが自伝「真実」を出版することに。

出版を祝うためファビエンヌの家にNYから、娘で脚本家のリュミエールと、夫で俳優のハンク、そして7歳の娘シャルロットが訪れます。


しかし、リュミエールが出版前に原稿を確認すると言っていたにも関わらず、ファビエンヌはそれを無視して出版。リュミエールは母であるファビエンヌに怒ります。

パリに到着後リュミエールが本を確認すると、そこにはタイトル「真実」とは違い、嘘ばかり書かれていました

 

女優として忙しい毎日を送っていたファビエンヌは家庭を大事にはしておらず、リュミエールの世話は使用人やファビエンヌの夫がしていました。

にも関わらず「真実」には、娘の世話をする日々が忘れられないという記述があり、リュミエール「これのどこが真実なの?」と怒ります。

しかし、ファビエンヌは娘の怒りに対して「事実なんて退屈だわ」とどこ吹く風。

 

何よりリュミエールを怒らせたのは、ファビエンヌの姉妹であり同じく女優として活躍していたサラに一切触れていないことでした。

サラは演技力もあり、ファビエンヌと共にトップ女優として活躍していたものの、若くして亡くなっています。

リュミエールは幼いころからサラに遊んでもらうことが多かったため、彼女の存在を隠す自分の母親に苛立ちを隠せませんでした。

 

また、ファビエンヌの秘書リュックも、自伝に一切出ておらず「否定された」と感じ、秘書の仕事を辞めてしまいます。

大女優としてプライドが高く、やや高慢な態度が目立つファビエンヌに周囲も辟易としていたのです。

 

そして、ある日の夕飯。ファビエンヌリュミエールが口論になり、そこでサラの死の事実が発覚。

なんとファビエンヌは元々サラが抜擢されていた映画を、映画監督と寝て主役の座を略奪。さらにその役で映画賞を受賞しています。その後サラは海に入り、帰らぬ人となっていたのです。

 

そして、ファビエンヌは新作映画の撮影をしていました。共演するのは「サラの再来」と呼ばれている若手女優。

映画はSFもので、不治の病のため地球にはいられない母親が、7年ごとに娘と会うという物語。ファビエンヌは年老いた娘役を演じます。

ファビエンヌが出演するには規模が小さい作品ですが、リュック曰くサラの再来と呼ばれている女優と共演するために引き受けたそう。

 

ファビエンヌはサラに似ているマノンを目の前にしたこと、そして自分の老いを痛感し、撮影もうまくいきません。

挙句の果てにはファビエンヌは自身のシーンの撮影にも関わらず、逃げ出そうとしますしかし、撮影に立ち会ったリュミエールに止められ、なおかつ叱咤されたことで撮影に戻ります。

 

撮影は無事終了し、マノンにサラが着ていたワンピースをあげるファビエンヌ

「サラの再来と言われているのが重荷だった」というマノンに対して、やさしく声をかけ、最後は温かな雰囲気に。

 

そして、脚本家リュミエールの言葉をもとに、ファビエンヌはリュックに謝罪をします。その後、ファビエンヌはある事実をリュミエールに話し、二人の今までの確執もとけていきます。

 

リュックも無事戻り、ファビエンヌ一家もギスギスとした雰囲気がなくなり、家族は再び一つになるのでした。

『真実』のネタバレ感想

ユーモラスで爽やか!

とっても軽やかでおしゃれなフレンチ映画に仕上がっていました。

万引き家族』のようなじめっとした雰囲気はなく、とってもコミカルで最後はじわんりと心が温まる作品。

普通に「ははは~」と声出して笑っているも結構いましたし。

 

その中にも是枝イズムというと、是枝監督ならではのちょっとした「毒」みたいなのが散りばめられてて、なんだか不思議な作品でした。本場フランスの方は、この作品をどう見るのか気になる…!

冒頭から、かなりブラックユーモアにあふれていて、ファビエンヌの「あの女優って生きてるの?あれ?葬式行ったわよね?あー人違いね。そっちは生きてるのね」とむちゃくちゃ失礼なセリフから始まります(笑)。

 

娘に「何が真実よ!嘘ばっかりじゃない!」とブチ切れられても終始ファビエンヌ「えーそうだっけ?」とすっとんきょんな感じも面白い。

カトリーヌ・ドヌーブの演技力なのか、どうにも憎めない役柄に仕上がっていますし。

 

予告の段階では、キレた娘が「みんなに本当のことを暴露してやる!」みたいなサスペンス的な展開になるのかと思いきや、娘も「お母さんだし、仕方ないわね」みたいなスタンスで進むので「え?軽くない!?」と驚いちゃいましたw

 

どちらかといえば、わがままお母さんに手を焼く娘とその周囲って感じの物語で、なんともユーモアたっぷりの作品でした。

母と娘、どちらに感情移入できるかも作品を楽しむポイントだと思います。私は圧倒的に娘の方でした(笑)

母と娘の「確執」と「許し」

とはいえ、リュミエールも過去に女優をめざし挫折した過去もあるようで、ファビエンヌに対して嫉妬憎悪が心の中で渦巻いていて。

物語が進むと、そのことがどんどん表面化していくのが見どころです。

 

旦那さんに「幸せな家庭を、お母さんに見せつけたかっただけだろ」と言われて、口をつぐむリュミエールの表情が印象的でした。

要はファビエンヌが手に入れられなかったもの、つまり「家庭」という存在を見せつけて「私の方が幸せですけど」とマウントとろうとしてたんですね。

 

ですが、大女優として自由気ままに振舞うファビエンヌを冷やかかな目で見つつも、なんだかんだ尊敬だったり愛情があるのも事実。

自分には無いものを持っている人って「ないわ~」と軽蔑しつつも、時に羨ましく思えたりしますよね。

女優っていうのは、そのくらい強い魅力が無いと務まらない仕事なんでしょうね。

 

そして、長年振り回され苦しんだ娘が、最後は母親の弱さを見て、手助けしてあげるという展開もなんだかリアル。

リュミエール的にも、年老いた母親が気弱になっていく姿を見て「母もこんな風になるんだなぁ」とちょっと嬉しかったんじゃないですかね。

 

絶対的だと思っていた母は案外脆いし、どうしもない人だなと気が付けて(笑)。

年齢を重ねたからこそ理解できたり、許せたりすることもありますよね。家族なら余計に。

その辺の家族ならではの機微が描かれていて、さすが是枝監督だな~と思いました。

「女はみんな女優」

なんだかんだラストはハッピーエンドです。とはいえ、いろいろと思い返してみると「ん?」という違和感を残すのも是枝監督の憎いところ。

 

物語のラスト、ファビエンヌリュミエールに対して、サラに嫉妬していたこと、そしてリュミエールの為に映画の役を引き受けたと話します。

 

その事実を知ったリュミエールは、泣きながらファビエンヌと抱き合います。ようやく二人が仲直りか…とジーンとするシーンです。

そして、今度はリュミエールの娘シャルロットが、ファビエンヌ「私もおばあちゃんみたいな女優になりたい」と語り、ファビエンヌはその言葉に喜び、シャルロットをやさしく抱きしめます。

 

「ええ話やな」とホロリとなっていると、シャルロットを待つリュミエール「ちゃんと言えた?」と問いかけます。

「どういうこと?」と思っていると、シャルロットは「言えたよ」と答えつつ「これって真実?」リュミエールに聞ききます。

 

つまりこれは…シャルロットの言葉はリュミエールの台本で、言わせてだけということでしょうか。

わだかまりが無くなったと思いつつも、リュミエールはやっぱりどこかファビエンヌ一泡ふかせたい的な恨みがあったのかなと(笑)。

あるいは、単純にファビエンヌを喜ばすだけだったのか…。私はわりと前者が理由なのかなと思っているんですが、ここはどう読み取ったか意見が別れそうですね!

 

そう考えると、実はファビエンヌの言葉さえ嘘なのではないかと考察してみたり。

ファビエンヌは女優ですから、本音なのか、演技なのか、その境目は非常に曖昧です。

むしろ、彼女自身も分かってないでしょう。

 

彼女の言葉がどこまで本当か、その真相はまさに闇の中。誰も分かりません。

なので、リュミエールも娘をつかって演技をさせ、真実か嘘かを曖昧にさせたのかなと。

 

まさに「女はみんな女優である」を体現したストーリーですね。俳優であるはずの夫にこの役を頼まないところも、何とも策略家やな~と思わせる。

そもそも、ファビエンヌのキャラクターもカトリーヌ・ドヌーブそのものって感じなので、彼女が演技をしているのか、それとも素でやっているのか何だかよく分からなくなりました(笑)。

 

この役をフランスの大女優に抜擢させるって、是枝監督すげーなと思いましたよ。

中には「え?それ大丈夫なの?」とヒヤヒヤとするセリフもありましたし。

 

「家族とは」「女とは」という深いテーマを、軽やかに描き切った作品でした。

是枝監督作品に、新しい風が舞い込んだような、それでいて是枝監督らしいような。そんな魅力が詰まった、美しい映画です。

やっぱり是枝作品好きだなーとしみじみ思いました!是非ご覧ください!