【2月の読書メモ】「すべて真夜中の恋人たち」「奇跡の人」感想まとめ

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こんにちは!今年から毎月読んだ本の感想をまとめて、記事にあげています、もっちゃんです。

 

今月は「すべて真夜中の恋人たち」「奇跡の人」の2冊を読みました!今月は2冊とも小説です。

最近は小説読むのが楽しくて仕方ないんですよねー。

 

それでは、感想をまとめていきまーす。

 

「全て真夜中の恋人たち」川上未映子

 

 

---あらすじ---

入江冬子、34歳はフリー校閲者。人づきあいが苦手で孤独を当たり前のように生きてきた彼女の唯一といっていい趣味は、誕生日に真夜中のまちを散歩すること。

友人といえるのは、仕事でつきあいのある大手出版社社員で校閲局勤務の石川聖。ふたりの共通点は、おない年で出身県が一緒であること。ただ、それだけ。

 

冬子は、ある日カルチャーセンターで初老の男性と知り合う。高校の物理教師という、その男性の「今度は、光の話をしましょう」という言葉に惹かれ、冬子は彼がときを過ごす喫茶店へ向かうようになる。

 

少しずつ、少しずつ、ふたりの距離は縮まってゆくかにみえた。

彼に触れたいという思いが高まる冬子には、高校時代に刻みつけられたある身体の記憶があった——。

すべて真夜中の恋人たち 川上未映子

 

心に残った言葉 

「感情のようなものをいっさい動かさないようにして、……ただ、そこに隠れている間違いを探すことだけに、集中しなくちゃいけないんです。」

冬子が校閲の仕事について三束さんに説明する場面。校閲ってそういう仕事なんだ!と初めて知りました。校閲さんがいるおかげで、私たちに正しい情報が詰まった本が届くんですね〜。

 

そのメロディにはほんとうに光の感触がみちていて、何かをやさしく指さすように、何かをそっと導くように、ひとつひとつの音がやってくる淡い闇のなかを瞬くのが見えるようだった。

 

冬子が三束さんから貰ったショパンの子守唄のCDを聞いている場面。物静かで趣味や好きなこともない彼女が、気になっている男性から貰ったCDを聞いてキラキラとした光に満ちている風景が思い浮かびますね。

 

感想

恋愛小説と紹介されていますが…一筋縄ではいかない恋愛もので、なんだか不思議な作品(笑)。

いまいちピンとくる作品ではなかったですが、川上さんの紡ぐ言葉がどれも美しくてうっとり。静かな夜にゆっくりと読むのに最適な作品でした。

 

主人公の「冬子」はフリーの校閲者で、自己主張もせず、やりたいことも特になく、アルコールの力を借りないと、まともに人と話すことも出来ない。

そんな冬子がカルチャースクールで出会った”三束さん”に恋をし、心の傷を少しずつ溶かし成長していく…そんな大人の恋愛物語です。

 

最後の最後で”ある嘘”が分かるのですが、ここは少しゾッとしてしました。人間だれしも孤独であり、孤独だから誰かを愛してしまうのでしょうか…。

 

どちらかというと、冬子と真逆のキャラクターとして登場する出版社の「聖」のほうが共感できる部分が多かったですね。

彼女が最後に泣きながら冬子に「あなたと友達になりたいの」と言うシーンが一番グッときました。

冬子も聖も性格は真逆ですが、なんらかの”生きにくさ”を感じているんだろうな~と。

 

ただ、この本のレビュー記事でこんな感想を見つけて、そういうことかーと納得しました。

 

『すべて真夜中の恋人たち』川上未映子【こんなにも美しく綺麗な文章に出逢えてよかった】 | ReaJoy(リージョイ)

 

私自身、どちらかというと 昔はこの作品に出てくる聖のような性格だったので、もっと早くにこの作品と出逢っていたら、聖と同じように冬子に対し、苛ついてしまうような気がするのです。

 

もしかしたら私も彼女たちと同じ年代(30代半ばあたり)になったら、また違う感想も出てくるかもしれませんね。その時にまた読み返してみたい作品です。

「奇跡の人」原田マハ

 

 

--あらすじ--

幕臣の娘である去場安は、岩倉使節団の留学生として渡米した。帰国後、日本にも女子教育を広めたいと理想に燃える安のもとに、伊藤博文から手紙が届く。

 

「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女」が青森県弘前の名家にいるという。

明治二十年、教育係として招かれた安はその少女、介良れんに出会った。

 

使用人たちに「けものの子」のように扱われ、暗い蔵に閉じ込められていたが、れんは強烈な光を放っていた。

 

彼女に眠っている才能をなんとしても開花させたい。使命感に駆られた安は「最初の授業」を行う。

ふたりの長い闘いが始まった―。 

 心に残った言葉

この世界を生きている限り、闇を照らす光があることを知る権利が、あの子にはある。

人として生まれてきた限り、人に愛される資格が、あの子にはある。

そして、いつかきっと、人を愛する気持ちが、あの子には芽生えるはずなのだ。

 

この世界に存在するもの、しないもの。名前のあるもの、ないもの。

安先生はれんにそんな世界のありとあらゆることを教えたいと願う場面。 

どんな子どもだろうと、教育と愛はその子の人生を左右するものになるんだなーとしみじみ思う言葉でした。

 

感想

かの有名なヘレンケラーと彼女の家庭教師アニー・サリヴァンの物語を、日本の青森を舞台に移し、再構築した小説。

スッキリと分かりやすい文章で、スイスイと読み進められました。「本読むの苦手…」って人も、この著者の文章は読みやすいと思います。

 

どんな人間にも平等に教育を受ける権利があり、正しい教育を受ければ才能は開花する…という信念のもと、アメリカ留学を終えた「安」がスパルタ教育を開始。

 

安先生の執念ともいえる情熱により、まともに言葉もしゃべれず、排せつの躾さえ出来なかった「れん」が美しく教養ある女性にまで成長させていく過程は感動もの。

 

なぜ、私たちには教育が必要なのか?

教育関連の仕事をしていない私でも、その答えに少しは触れることができた作品でした。教育や福祉関係の人はより興味深く読めそう。

 

男尊女卑が色残る明治時代を舞台にしているのも面白いですね。

「女に学問なんて必要ない」とか「女のくせに」と言い張る男性たちに、安先生が結果を出して納得させていくのが痛快!

決して嫌味や小狡いことはせずに、淑女らしくスマートに対応し、最後はれんを成長させることで周囲を黙らせてしまうという…。

こういう女性たちがいたからこそ、今の女性の地位があるんだなーと改めて考えさせられました。

  

あまり普段は読まないジャンルの本ですが、だからこそ知らないことが知れてよかったです。教育関係はもちろんのこと、お子さんのいる方にもぜひ読んでほしい作品でした。

 

これで、2月の読書メモは終了です。3月も素敵な本に出会い、また感想をまとめようと思います!