「パラサイト 半地下の家族」★4.5(5点満点)
(引用: https://eiga.com/movie/91131/photo/)
こんにちは!もっちゃんです!
今回は話題の映画「パラサイト」を鑑賞してきたので、感想&考察をまとめたいと思います。
公開してすぐに見に行ったんですが、ほぼ満席に近くお客さんが入っていてビックリしました!
そして、見終わった後はいろんな意味で「とんでもねぇ映画を見ちまった…」と放心状態になるほど素晴らしい映画でした。
今回はそんな韓国映画「パラサイト」の感想や考察をまとめていきます。記事内ではガッツリネタバレしているので、まだ見ていない人はご注意を。
「パラサイト 半地下の家族」あらすじ
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「殺人の追憶」「グエムル 漢江の怪物」「スノーピアサー」の監督ポン・ジュノと主演ソン・ガンホが4度目のタッグを組み、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルムドールを受賞した作品。
キム一家は家族全員が失業中で、その日暮らしの貧しい生活を送っていた。そんなある日、長男ギウがIT企業のCEOであるパク氏の豪邸へ家庭教師の面接を受けに行くことに。
そして妹ギジョンも、兄に続いて豪邸に足を踏み入れる。正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していく……。
(抜粋:パラサイト 半地下の家族 : 作品情報 - 映画.com)
「パラサイト」監督・キャスト
監督…ポン・ジュノ
キャスト
キム・ギテク…ソン・ガンホ
キム・ギウ…チェ・ウシク
キム・ギジョン…パク・ソダム
チュンスク…チャン・ヘジン
パク・ドンイク…イ・ソンギュン
ヨンギョ…チョ・ヨジョン
ポン・ジュノ監督&ソン・ガンホの名コンビ!ソン・ガンホの迫真の演技は必見です。
「パラサイト」ネタバレ感想&考察
韓国映画で初めてのパルムドールを受賞し、アカデミー賞作品賞にもノミネートされている「パラサイト」。
全世界でヒットし、なんと既にドラマ化まで決まっています。しかも、制作総監督は「バイス」のアダム・マッケイ!
eiga.com
社会派作品で知られるアダム・マッケイがどのように「パラサイト」をドラマにするのか…。気になりますね。
さて、「パラサイト」のテーマは、ずばり貧困と格差。
「万引き家族」に引き続き、貧困をテーマにした映画がパルムドールで最高賞を受賞しているとは…。うーん。現代の闇。
ただし、貧困と格差という重々しいテーマながらも、映画自体はエンターテイメント性が高く、劇場でもクスクスと笑い声が聞こえる場面が多々ありました。
確かに前半部分は富裕層の家に貧困層が寄生(パラサイト)していく過程がテンポよく描かれ、スパイ映画っぽいんですよね。
パク家の奥さんが困った顔で「どうしましょう!?」と言うところとか、本当マヌケなかんじ(笑)家政婦さんのゴミ箱のくだりは、みんな笑ってましたね(笑)
ただ、後半にいくにつれて物語の雰囲気が重々しくなってくるのですが…そのカギとなるのが、ある家族の存在。
彼らが登場してから物語が急速に展開していき、誇張なしで予想だにしない展開が待ち受けています。
そこで炙り出されるのが格差と貧困。
韓国は超学歴主義社会ですが、その中でも成功できるのはほんの一握り。
女性の合計特殊出生率は1を割り込み0.98となり、世界最低水準の数値まで落ち込んでいます。
「貯金ないまま老後」韓国、広がる格差 受験競争や高齢者の貧困…浮かぶ社会のひずみ|【西日本新聞ニュース】
上の記事で
「国内総生産(GDP)は成長しているそうだが、私たちには関係のないことだ。格差が広がり、真ん中の層が薄くなった」鄭さんの言う「真ん中」とは中間層のことだ。
という言葉が出てきますが、「パラサイト」はまさに”失われた中間層”を描いてい
る作品です。
何もかも奪われ、必死に今日を生きる人々。
果たして彼らのことを単なる「自己責任」の一言で片づけて、知らない顔をするのが正解なのか。今の現代社会に一石を投じる、とんでもない映画でした。
「貧困なんてない」という人たちへの警鐘
※ここから物語の重要なネタバレがガンガン出ます。
最初はキム家が侵略にしたものの、裕福なパク家に苛立っていく…って内容かと思いきや、なんとパク家の地下には、事業に失敗し借金取りから逃げている元家政婦の夫が住んでいて、さらには元家政婦と夫 vs キム家族の争いが起こるという驚きの展開に。
「家」という小さな舞台をフルに活用したカメラワークや物語の運び方も映画ならではの面白さ。
そして目には見えない社会の格差を、高台にあるパク家と半地下や地下の部屋など物理的な「上と下」の位置関係から表現していくのも見事。
元家政婦が去った日も坂を下る(=貧困に戻る)し、大雨の日に下って行けば行くほど悲惨な状態になっていくのも凄いわかりやすいですよね。
ここで描かれるのは単純な貧富の差だけでなく、社会的な弱者を救おうとしない、今の社会の在り方への警鐘ではないのでしょうか。
この文章を書いていて、ふと思い出したことがあります。
「万引き家族」を地元の映画館で鑑賞した際、CMでも「感動作!」とバンバン宣伝していたからか、その映画館にしては珍しく結構な人が入っていました。
しかし、物語の中盤あたりになってくると、観客の何人かは「思ってたのと違うな~」となったのか、堂々とスマホはいじり出すし、隣の人とそこそこな音量で話し始めたんです。
その時は単純に「マナーの悪い客多いな」と思ったんですが、後々「万引き家族」の関連記事で「こんな生活している人、日本でいないでしょ」という感想を見て、なんとなく彼らの行動が腑に落ちました。
たぶん、あのとき堂々とスマホをいじったりしていた彼らは、きっとパク家と一緒で、最下層にいるような貧困層の存在なんて気にかけたことさえないのでしょう。
ここで、昨年来日したフランシスコ教皇のスピーチについての記事を残しておきます。
貧困や格差について、彼らしい言葉で伝えています。
blogos.com
スピーチの冒頭で、彼はこう話しています。
人やコミュニティ、そして全社会が、表面上は発展していたとしても、内側では、疲弊し、本物の命や生きる力を失い、中身の空っぽな人形のようになっている。(中略)
まるでゾンビのようで、彼らの心臓は鼓動を止めている。なぜならそれは、誰かと人生を祝い合うことができないからだ。
「パラサイト」や彼の言葉を、ゾンビ化した日本でどう受け止めるのか。私たちの人間性が試されているように思います。
映画内のアレコレを考察
映画内で「どういうこと?」と思うことが多々ありましたので、今回はこの辺を細かく考察していこうと思います。箇条書きですが、あしからず。
キム一家の匂い
湿っぽい半地下で暮らしている人特有の匂い。ちなみに、韓国の人はあーあの匂いねと分かるそうです。
その匂いをパク社長たちは「あの匂い無理w」と一線を引いている。
性格が良くても、仕事が出来ても、半地下から抜け出さないと解決しようのない匂いを理由に差別される。その屈辱と怒りが後半の事件へと徐々につながる。
なぜインディアン?
・「弱者は切り捨てていく」という新自由主義思想の反映では。パク家はその流れの勝者になり、キム一家は敗者となった。
・ITの発展により、キム家たちが勤めていたような多くの中小企業が軒並み廃業している⇒経済格差と貧困の始まり。
・もともと国の経済を支えてきた「中小企業」と国をつくり上げてきたネイティブアメリカンたちを重ねているのでは。何もかも奪われ、生活を余儀なぐされた人々の象徴。
・あるいは、表面的な部分(服装など)だけを愛し、その裏にある悲惨な文化を鑑みない、社長の薄っぺらさを表しているのでは。
自分の利益のためであれば、先住民がいようと中小企業が潰れようとどうでもいいと。
あの石は何なの?
・逃れられない「貧困」を表現しているのでは。彼らに重くのしかかる貧困の連鎖。
・その石(貧困)にキム家の息子が命を落としかけ、最終的には事態をより悪化させてしまう→キム家の未来も明るくはないと示唆。
パク家の地下の住人(元家政婦の夫)
・自分が貧困に堕ちた社会構造に疑問を抱かず、富裕層を「リスペクト!」するだけ。
貧困層は社会に怒りを覚えるのが疲れ、蜜を吸い続ける上級階級の人々にすがるしかない。こんな世界が本当に幸せなのか?
・パーティー会場で包丁を持った彼に、誰も気づかないのが印象的。会場のセレブたちにとって、彼の存在など見えていないし、見ようともしていない。
そして、彼のバナナを食べ方が凄い。何を見てあの演技をしてるんだろう…。
ラストシーンについて
パク社長をさしたキム家の父親が、パク社長の地下に逃げ、暮らし始める。
その後、それに気づいた息子が社会的に成功し、パク家の豪邸を買い、父親が地下から出てくる映像が流れる。
しかし、ラストカットは冒頭の半地下の家。一番最初のカットと同じ。
つまり、彼らは貧困の連鎖からは抜けられない(ループ)を意味している。
彼はきっと、あの家を買うこともできず、ずっとあの半地下で暮らすのでは。
これは「努力が足りない」とか「やればできる」という問題ではない。
そもそも彼らは挑戦することも出来ない最底辺の貧困層であり、個人の問題ではなく社会的構造の問題。
ざっと思いついたのはこの辺でしょうか。いろんなシークエンスが隠された映画なので、まだまだ考察しがいがありますね。
そして、今まで書いた映画レビューで一番感想をまとめるのが難しい映画でした。
もう4000字も書いてますしね…。
こんなに奥深くて多層的な映画、そうそう見れるもんじゃないです。
社会派で、エンタメで、コメディで、サスペンスで…。いろんなジャンルの映画を2時間で見ているような気分でした(笑)
既に今年のトップ3になりそうな映画です。こういう映画が日本でも作られたらいいですね。