『天気の子』個人的評価★3.9(5点満点)
今さらにもほどがありますが、『天気の子』を見ました!(笑)
『君の名は。』は「うーん。深海誠さん、こういう路線で行くのか~」とちょっとノレなかったんですが、今作は深海誠さんらしさもありつつ、なおかつ商業的に大きなことを成し遂げたな!と大満足の作品となっていました。
今回は『天気の子』の感想やあらすじをまとめます。
『天気の子』あらすじ
小さな島国で暮らす高校1年生の帆高は、窮屈な日常に嫌気がさし家出をして、東京に辿り着く。しかし、東京は連日雨が続いており、気候変動が起きていた。
住む場所も仕事もない帆高だが、オカルト雑誌のライターをしている須賀と、須賀と働く女性・夏美に助けられライターとして働くことになる。
帆高は須賀たちと事務所で寝泊まりし、ライターの仕事を楽しんでいた。
ある日、帆高たちは噂で100%の晴れ女がいると聞く。その少女は陽菜といい、彼女が祈ると必ず晴れになる能力が持っていた。
帆高と陽菜、そして陽菜の弟・凪と一緒に、「晴れにしてほしい」という依頼を受けるというビジネスを始めるのが、陽菜の体に徐々に異変が起きてきて…。
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深海さん自身が各メディアでも「『君の名は。』で怒らせた人を、もっと怒らせたかった(笑)」と言っているように、物語の結末は賛否両論。
ただ、ざっと見る限り受け入れていない人が多いのかなという印象ではあります…。
私の見解については後程…。
『天気の子』キャスト
森嶋帆高… 醍醐虎汰朗
天野陽菜…森七菜
天野 凪…吉柳咲良
須賀圭介…小栗旬
須賀 夏…本田翼
『天気の子』と同じく、俳優や女優さんを多くキャスティングしています。
それにしても、今回の主人公2人は新人の方だと思うんですが、どちらも上手でビックリ!まだまだ青臭い声がとにかくキュート!
あと、本田翼ちゃんがすごい良かった!アイドル女優的なイメージが強かったけど『新聞記者』に続き、とても良い演技でした。
あの気怠さと優しさが入り混じった感じが可愛い!(笑)
『天気の子』ネタバレ感想
私はあのラストに賛成!…と思っていたけど
『天気の子』が『君の名は。』に比べて賛否両論となったのは何と言っても物語のラスト。
帆高くんの決断が許せるかどうかで、大きく変わるでしょう。
「世界を変えてしまった」と帆高くんが言うとおり、人柱である陽菜ちゃんを救ってしまったことで、東京は半分以上水没してしまいます。
このラストを「何ちゅー自己中なガキどもなんだ!」とイライラするかどうかで意見が大きく変わると思います。
劇中では「こんなことになってすいません」と申し訳なさそうに話す帆高くんを尻目に須賀は「なーにが世界を変えただよ!世界は元から狂ってんだよ」と彼の行いを遠回りに肯定します。
また「江戸時代はね、この辺は海だったのよ」とおばあちゃんが語るように、帆高くんの行動を許すようなセリフも多々出てきます。
じゃあ、私はというと…このラストはアリです。
むしろ『君の名は。』よりも好きです。
帆高くんが必死に陽菜ちゃんを救おうとするシーンは、年甲斐もなく号泣しちゃいましたw
陽菜ちゃんや帆高くんが世界を背負う必要なんて一切ないし、彼らの決断を許してあげる大人でありたい…そう思ってしまいました。
しかし、鑑賞後この作品の感想を書いている最中に台風19号が日本に上陸し、甚大な被害をもたらしました。
もちろん映画とは無関係ですが、それでも「あれ、もしこれが帆高くんの決断なら…許せるのかな」と胸がザワザワとしました。
劇中「もともと、私たち人間は神様からこの地を借りているだけにすぎない」みたいなセリフが出てきます。天気とは天の気分のことで人間がどうこう扱えるものでもないと。
水害がテーマの話といえば「ノアの方舟」がパッと思い浮かびます。要は人間の堕落を怒った神様が、洪水を起こして一旦世界をリセットします!って話です。
この手の神話は世界各地にあり、大体テーマは共通しています。
とはいえ、だ。
これが神様の思し召しだから我慢しろ!というのも、現代人の私からすれば、それをすんなりとは納得できないわけで。ましてや無宗教で信仰心もない人間ですし。
ましてや政治家が「まずまずで終わりました」と発言したり、被災地への言葉もなしにラグビー鑑賞に夢中なお国のトップ共が、何の苦しみも抱えずにいるのも許せない。
彼らがゆうゆうと無責任な発言や行動をしているなかで、どれだけの人が苦しい思いをしているのか。
こんなことをグルグルと考えているうちに、感想を書く手が止まってしまい未だにまとまっていません。
まさか深海さんの作品でここまで何日も悩むとは思わなかったです(笑)。
今、このタイミングで見たからこそ感じることが色々あります。色んな意味で見てよかったな思える映画です。
「セカイ系(笑)」を必要としている人もきっといるよね
深海さんの作品はいわゆる「セカイ系」と言われ、その作風を嫌う人もいます。
現に「セカイ系」で検索すると、関連キーワードに「気持ち悪い」と辛辣な言葉が並んでますし(笑)。
私も歳をとったのか、学生時代ほど「セカイ系」と呼ばれる作品に感情移入が出来なくっています。それは私が社会側に行ってしまったからかな、とも思っていました。もう新海さんの作品に共感できないかもな~と。
しかし、『天気の子』はその辺の概念もぶっ壊して「何でもいいから、この映画見て感情を揺さぶられてくれ!」という深海さんの心意気を感じました。
ここまで深海さんがセカイ系の殻を破ったのは、ひとえに現代社会の危うさにあるのではないでしょうか。
そもそも今作では『君の名は。』に比べると、より社会との繋がりが強く描かれています。マックや自炊シーンで浮かび上がる若者の貧困は、深海さんにしては珍しい描写だなと思いました。
あるいは大人に助けられて仕事をしてみたり、陽菜ちゃんが晴れ女業を通して自分の役割を見つけたり。
深海さんは帆高や陽菜ちゃんのように普通の社会の向こう側にいる子どもたちに対して「君のことを認めてくれる大人はいるよ。安心してね」と優しいメッセージを発信しているように見えました。
連日ニュースを見ても暗い話ばかりで、若者は夢を見ることも忘れ、日本に希望を抱くこともなくなっているでしょう。
そんな社会でも愛する人を見つけることはきっと出来るし、そんな君の愛を見守っている人もいるんだよと。
上映後、女子中学生グループが、泣きながら「めっちゃ良かった」と言っている姿を見て、なんだか私もジーンとしてしまいました。
彼女たちが今後、愛する人が出来たとき、その愛を守れる社会をつくるのは他でもない私たち大人なんだなぁと柄にもないことを考えたりしちゃいました。
今作に対して「深海さんは若者の問題に突っ込みながらも、解決策をしめしていない」との苦言を見かけましたが果たしてそうでしょうか。
この作品は、きっと今の若者にとって何らかの形で、かけがえのない作品になっているのではないでしょうか。
若い頃に映画なり小説なり音楽で生きる希望を見出したように、この作品もそんな大事な一作になりうると思います。
それだけでも深海さんの意義は果たしているんじゃないかなと思えます。最後に深海さんのインタビューから一部を引用しておます。
「帆高を許せないし、彼が叫んだあるセリフを受けて、この主人公には全く感情移入できないという人もいっぱい出てくるであろうと思ってました。
それはもう、そういう話なんだから(そういう人が)出てくるのはしょうがないと。
あのセリフ、彼の選択を、政治家がやったら叩かれるでしょう。
けれど、エンタメならば叫べるわけじゃないですか。」
エンタメだから出来ること。それを証明してくれた作品でした。
こういう作品、最近の邦画では中々ないですよね。
深海さんが描いていく”セカイ”を、これからも楽しみにしたいと思います。