『新聞記者』のあらすじと感想/杉原はラストの言葉も考察!

『新聞記者』評価★4.3点(5点満点)

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とうとう私の地元の映画館でも『新聞記者』が公開になりました!

公開当時からずーと待ち望んでいた作品。結論から言うと、超衝撃作でした。

そんな『新聞記者』のあらすじや感想、また話題のラストシーンの考察までまとめていきたいと思います。

『新聞記者』のあらすじ

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ある日、東都新聞に謎のヒツジの絵と大学新設の計画書がFAXで送られてくる。東都新聞社会部の記者・吉岡エリカはこの計画書の真相について調べていくと、神崎という男が関わっているのではないかと気づく。

しかし、真相を探ろうとする最中、神崎が突然自ら命を絶ってしまう。

 

その後、吉岡は神崎の件を不可解に思い続けて調査していくと、神崎の元部下の杉原拓海に出会う。内閣情報調査室に務める彼も、神崎の件について何か政府が絡んでいるのでは?と不思議に思っていたのだ。

 

吉岡は杉原と共に神崎の事件の原因と、謎のFAXについて探っていくと、そこには日本政府のある大きな秘密が隠されていたことを知る…。

『新聞記者』の監督・キャスト

■監督…藤井道人

 

映画「ディアンドナイト」やドラマ「100万円の女たち」など多岐に渡って活動しているようですが今作が初見でした。

当初依頼されたときは、監督自身、新聞もほとんど読まないため、何度か断っていたようです。

というか、こんなテーマの作品、怖くて引き受けられないですよね…。本当尊敬します…。

 

■キャスト
・吉岡エリカ…シム・ウンギョン

・杉原拓海…松坂桃李

・杉原奈津美…本田翼

・神崎俊尚…高橋和也

・多田智也…田中哲司

 

主人公の吉岡は韓国と日本のハーフという設定で、演じるのは韓国人の女優さんです。なんでも、日本人の女優でこの役を演じる人が見つけられなかったんだとか…。

www.excite.co.jp

 

松坂桃李くんや本田翼ちゃんといった旬の俳優を起用しているにも関わらず、番宣も全然なかったですしね。欧米だと政府を批判するタレントやコメディアンなんて沢山いるのに!

それでも、これだけヒットしているのは制作陣の「本気」が伝わってきた結果じゃないでしょうか。

 

ちなみに、原案は東京新聞記者・望月衣塑子の同名ノンフィクション著書です。

 

『新聞記者』の感想まとめ ※ネタバレあり

現日本政府を真っ向から批判する挑戦作

『新聞記者』のストーリーはあくまでフィクションですが「これって、あのニュースでは?」と政治に疎い私でさえ気が付く内容です。

 

物語の主軸となるのは政府のあらゆる忖度が露見した【森友加計問題】です。

vdata.nikkei.com

 

追及されたら自分の都合の良いように改ざんし、あげくは「資料は破棄した」と平然と言ってのける日本政府。

この映画はあくまでもフィクションですが、描かれているのはそんな「今の日本政府」の姿です。

映画と同様、森友加計問題にて資料の改ざんをした職員は自ら命を絶っています。

 

ちなみに、この記事を書くために”森友加計”でググると、サジェストワードには「どうでもいい」という言葉が出てきて驚きました…。こんな忖度だらけの政権をどうも思わないって…。

 

どのメディアも安倍政権にベッタリな中、果敢にもこの作品を作り上げたことに尊敬の思いを伝えたいです。

 

制作や宣伝はもちろん、キャストの方もかなり苦労したようで。主人公を演じたシムさんはじめ、人気俳優の一人である松坂桃李くんも本当に尊敬します。

彼の演技で何度も泣いちまったよ…。難しい役どころを全力で演じていて、「こんな良い演技するのか!」と驚かされました。今後の作品も楽しみ!

政府の情報操作にまんまと乗せられた私…

松坂桃李くん演じる杉原拓海は「内閣情報調査室」(通称:内調)で働いているという役柄です。この内調の描写は、本当にゾッとしました…。

 

映画では冒頭から伊藤詩織さんの事件をベースにしたであろうテーマが描かれます。

週刊誌に加害者男性と総理の関係がすっぱ抜かれると、杉原の上司である多田は平然と「女側のハニートラップだったというストーリーを流せ。あと彼女が野党と繋がっている事実を無理やり作り出せ」と命令。

杉原は「民間人にそこまで…」と疑問を感じつつも、隣の同僚はSNSに被害者女性の誹謗中傷を黙々と書き連ねており…。

 

要は内調にとって正しい正しくないはどうでもよくて、政府にとって不都合なニュースは叩き潰せればいいだけなのです。

こんなことを本当に国のトップが行っているのでしょうか…怖すぎる…。

 

そして、何よりも恐ろしかったのは、私自身この情報操作にまんまと乗せられてしまっていたことです…。

 

事件当時、伊藤詩織さんについて何気なくSNSなどで検索すると「伊藤詩織はハニートラップ!?」「こんな服着て、どうせ自分から誘ったくせに」などの声がズラリと並んでいました。

 

しかし、当時の私は深く考えず「へーそうなんだ」とまんまと信じてしまっていたのです…。同じ女性として、あるまじき考えですよね…。

 

その後、伊藤さんがイギリスの番組で事件について語ったことや「Black Box」の出版により、ようやく事件の実情を理解しました。

blogos.com

 

女性が勇気を出して声をあげたのに…本当に私はアホでした…。

今回、映画を見て「私はまんまと騙されていたのか…」と自分の無知さを再度心から恥じました。

 

多田は「正しいかどうかは国民が決める」と語りますが、果たしてどれだけの国民が正しい情報を見極められるのでしょうか?

情報に溢れた今の時代こそ、自分の考えを持ち、情報を判断する力が試されていると痛感しました。

杉原はラストになんと言ったのか?

さて、問題のラストシーンについて考察してみます。

 

物語の終盤、吉岡と杉原は大学設立の目的は生物兵器の所有を可能にすることだと突き止めます。吉岡は杉原の「もしものときは僕の実名も出してもいい」という言葉を頼りに、記事を公表。

しかし、そのころ杉原は多田に呼び出され「リークしたの、お前じゃないよな?」と尋問され、あげく「外務省に戻らないか?」という誘いまで受けます。

 

黙って部屋を後にした杉原は、赤信号になった横断歩道で吉岡と対面します。ここで杉原はボソボソとつぶやくが、何を言っているのか観客にも分かりません。

 

しかし、あのやつれきった表情からすると「さよなら」「ばいばい」みたいな言葉なのかなと思いました。

そして、杉原はそのまま横断歩道に身を乗り出して、車に轢かれるというバッドエンドなんじゃないかと考察しました…。

最後に吉岡の慌てた声は、そういう意味なのかなと。

 

杉原が吉岡を裏切って「やっぱり実名は辞めてくれ」ってラストだとしたら「ごめん」みたいな言葉をつぶやいたのかなとも思いますが….。

 

でも、正義感の強い杉原は吉岡を裏切るようなことは出来ないと思うんですよね。

なので、神崎同様、自ら命を絶つ道を選んでしまった…というラストがしっくりくるなぁと。辛すぎるラストですけど…。

 

あと、このラストの描写、すごく印象的でした。

記者として新しいスタートをきった吉岡の場面は太陽の光が差し込んで、すごくキラキラしている。

一方、杉原の場面はあの紙面が世に出ても暗くどんよりとしていて、結局何も変わらない国家のあり方を示しているようでした。

 

というか、内調のシーンは終始どんよりとしていて、働いている人も皆ロボットのようで怖かった…。国のトップがこんなで、働き方改革なんて実現できるのでしょうか。

サスペンス映画としても面白い

見る前は堅苦しい社会派映画かと思ってましたが、意外にもハラハラドキドキするサスペンス映画に仕上がっていました。

 

東都新聞に送られてきたヒツジの絵と大学設立の計画書は、誰が送ってきたのか?何故送ってきたのか?これを解き明かしていくのが、物語のメインストーリーです。

そして、その謎が解けて、記事にしようと杉原と吉岡が奮闘していく様も最高にアツい。

 

政府絡みの映画と聞くと「なんか難しそう」と遠ざけてしまう人も多そうですが、そんな人こそ見てほしい作品です。

映画自体のテンポも良く、ハラハラドキドキも楽しめ、なおかつ泣ける。そして、最後にはゆっくりと余韻に浸りながら、アレコレと考えたくなる…そんな映画の楽しさや面白さをぎゅっと詰め込んだような作品です。

 

私のように政治がよく分からないという人も、難しいことを考えずに見れますよ。というか、そういう人こそ見てほしい作品です。

この映画の問いかけるテーマについて、あなたはどう考えるのか。それを考えるだけでも、なにか1歩を踏み出せるはず。

 

多くの著名人が「今見るべき映画」と大プッシュしていますが、特に若者たちこそ見るべき映画だと思います。今の日本の腐敗を背負うのは、これからを生きる若い世代です。

 

主人公の吉岡を演じた韓国人女優のシムさんや松坂桃李くんはじめ、キャスト陣の演技が皆さんとにかく素晴らしかった…!

杉原の上司多田を演じた田中さんとか、演技と分かっていても怖いし、ものすごくムカつく(笑)。有無言わせないあの威圧感…画面を見ているだけで胃がキリキリしました…。

 

あと、本田翼ちゃんがすごく良かった!本田翼ちゃん演じる普通の一般市民がいることで、物語にぐっと入りこみやすくなりました。

あのゆるっとした感じが何とも可愛くて最高でした。

 

多くの人が絶賛しているこの作品。本当に今こそ見るべき作品です。

是非いろんな方に見てほしい、今年を代表する邦画でした。いやーこれを機に、邦画の新しい風が吹いてきたらいいですね。