「RBG 最強の85歳」評価★3.8点(5点満点)
アメリカの最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグを描いたドキュメンタリー「RBG最強の85歳」を鑑賞しました。実は彼女はアメリカでは絶大な人気を誇り、Tシャツやマグカップといったグッズまで販売されているそう!
今作はそんな彼女の半生にせまるドキュメンタリーです。日本人には馴染みのない女性ですが、果たして彼女はいかにして時代のアイコンとなったのか?
日本人女性も是非見てほしい作品でしたので、詳しくレビューしてきます。
「RBG 最強の85歳」あらすじ
85歳という年齢ながらも、アメリカの最高裁判事として現役で活躍するルース・ベイダー・ギンズバーグ(通称・RBG)。
ニューヨークのユダヤ系の家に生まれた彼女が、女性差別が色濃く残る時代の中、弁護士としてどのようにキャリアを積み上げていったのかを描いたドキュメンタリー。
女性やマイノリティへの差別に対して、彼女は以下に闘ってきたのかを、彼女の判例とともに振り返る。
第91回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞のほか、歌曲賞にもノミネートされた。
「RBG 最強の85歳」の監督
監督…ジュリー・コーエン&ベッツィ・ウェスト
監督はどちらも女性。ドキュメンタリー作品を数多く手掛けており、その実力も高く評価されているようです。
以下のインタビュー記事に、お2人の写真が掲載されていました。
すごくきれいな女性!そのほかのスタッフも全て女性を採用しているそうです。
「RBG 最強の85歳」の感想
弱き者のヒーロー
アメリカで絶大な人気を誇り、ポップアイコンとなっているルース・ベイダー・ギンズバーグ。今回の映画で初めて彼女のことを知りました。
今年で86歳と大分おばあちゃんなんですが、彼女の顔がプリントされたTシャツやマグカップは、若者の間でも大人気だそう。
劇中でも大学生くらいの女の子たちが彼女の講演前に「もう超楽しみ!」と、まるで大好きなアーティストのコンサートに来たような口調で言うのでビックリしました。政治的立場にいる人が、それだけ若者に支持されるって凄いですよね。
そもそも日本の最高裁判事の名前さえ知らない…というのは私だけではないはず。しかし、アメリカでは裁判連邦最高裁判所判事が国の将来を左右する立場にあり、その人選は非常に注目されるのだそう。
今作はそんな彼女がいかにして最高裁判事へと選ばれたかを描いていくドキュメンタリーです。
まず驚くのが彼女のロースクール時代。ルースが入学したハーバード大学のロースクールは、当時男子学生が500人に対して女性は9人だけ。しかも新入生の歓迎会で、教授は女性たちに対し「君たちは本来男性が座るはずだった場所にいる」と言ったとか…。
まだまだ女性の権利が確立されていない時代とはいえ、ひどすぎる言葉です。ふと思い出したのは、昨年明らかになった東京医大の入試差別。
合格点に達していたのに女性だからという理由で不合格にされたという衝撃的なニュースでした。
ルースも同様にコロンビアロースクールを首席で卒業したのに「女性だから」という理由で、どの法律事務所にも就職できなかった過去をもっています。
彼女はその後、女性やマイノリティの人権を守るための裁判を引き受けるようになったのは、彼らの痛みや苦しみが分かるからでしょう。特権階級の白人男性には想像もできない、弱者の声を救うために彼女は立ちあがったのです。
どんな男性の前でも怯まずに毅然と話し、自身の知識で勝ち上がっていく彼女は確かにカッコイイ…。日本だと誰が当てはまるでしょう?芸能人なら何人か思いつきますが、彼女のように政治にも影響を及ぼす人物となると思いつきませんね…。
若者の間ではSNS等で彼女の顔を、映画「ワンダーウーマン」や「アベンジャーズ」のブラックウィドウにコラージュした画像もあるそうです(笑)。
ルースは映画や小説といった仮想現実ではなく、現実世界で弱者を救うヒーローなんですね。
今の当り前は誰かが作り上げたもの
彼女は1970年代に、女性やマイノリティの権利を守る裁判を担当することになります。彼女の勝利により、アメリカは着々と女性やマイノリティの権利を確保していったのです。
彼女も劇中で「真の変化は一歩ずつもたらされるもの」と語っています。彼女が行ってきたのは、未来のための小さな1歩。でも、その1歩を積み上がていくことこそ、明るい未来を作るんだなぁとしみじみ考えてしまいました。
よくよく考えてみれば、日本で女性の選挙権が認められたのは1945年(昭和20年)。調べてみて、まだ74年しか経っていないのか!と初めて知りました。
この背景にも色んな女性たちが戦い、苦しんだ思いがあるのでしょう。日本はまだまだ男女平等とは程遠いですが、今の当り前は先人たちが作り上げてきたもの。
声を挙げて1歩ずつ戦ったからこそなんだと気が付きました。
旦那さんがステキ!
ルースは現在86歳にしてバリバリ仕事をこなすだけでなく(深夜まで仕事をするらしい!)ジムでせっせとトレーニングまでする、とんでもないおばぁちゃん!
彼女は他の女性に比べても随分と小柄なので「そんな力がどこにあるの!?」と驚きを隠せない…。ルースのトレーニングコーチも「彼女はまるでサイボーグ」と言われていますw
そんな彼女ですが、私生活では2人の子どもを持つお母さん。
歴史を変えるような重大な仕事をこなし、なおかつ子育てまでできたのは他でもない夫のマーティンの支えがあったから。
2人は大学からの付き合いですが、ルースはマーティンのことを「彼は唯一、私の賢さを褒めてくれた」と言っています。マーティンは彼女の才能にいち早く気付いていたんでしょうね。
ルースが忙しくなったとき、マーティンは彼女を支えるために自身のキャリアを諦めています。しかも、マーティンも凄腕の弁護士としてNYでは有名人だったのに、そんなキャリアを捨てて家のことを率先してやるようになったとのこと。
この決断が出来るって、本当に相手を尊敬して信用していなければ出来ないですよね…!
とはいえ、男性側にもプライド的な問題があるんじゃ…と思いきや、マーティンがこんなことを言っている映像が流れました。
「僕は妻には法律的なアドバイスはしない。
その代わり、彼女は僕に料理のアドバイスをしないんです」
彼女とうまく生活する工夫は?と聞かれてマーティンは冗談交じりにこう答えるのです。なんて心が広く、優しい人なんだろう…と感動しました。
その隣でニコニコ笑うルースが可愛いのなんの!ルースが最強の女でいられるのは、彼が隣にいるからなんですね。お互いに支え合って生きる事。これこそ理想の結婚生活だ!
苦しむ人を助ける人になりたい
日本といえば、先進国の中でも女性の地位が低いと度々問題視されています。テレビやSNS、あらゆる場面で女性差別的な言葉を耳にし、女性でいることに嫌気がさしたことも多々あります…。
劇中で彼女はこんなことを言います。
「あなたの娘や孫娘をのために、どんな社会にしたいか。男性たちは、よく考えて」と。
そういえば某アイドルグループのこの事件があったとき「部屋に行ったくせに」という暴言を吐いた人が多々いましたね。
この事件に限らず女性が被害になる事件の際、そんな服着ているからだとか誘ったくせになんて言葉を吐く男性がいます。
その人たちに問いたい。
自分の娘や孫娘が被害にあっても同じ言葉が言えるのでしょうか。本当に悪いのは女性ではなく、事件を起こした男性です。
ましてや、苦しむ女性を同じ立場の女性が批判するなんてあり得ないことでは?
詩織さんの事件の際、杉田議員は「女性側に落ち度がある」と切り捨てましたね。
この人は女性に限らず、弱者への思いやりが皆無なのでしょうけど。それにしても、同じ女性で、なおかつ女性の権利を守る政治的な立場にも関わらず、このような発言を平気でしてしまうのはいかがなものかと。
私はルースのような影響力はないですが、せめて隣で困っている人が手を差し伸べるられるような人にはなりたいです。
隣で泣いている人を、さらに叩きのめすようなそんな人間にはなりたくない。
権力にこびず、不平にはNO!と言う。
ルースが愛される理由がよく分かるドキュメンタリー映画でした。
女性はもちろん、男性にも是非見てほしい映画です!