【グリーンブック】あらすじ・感想/まさかのマハーシャラ・アリのツンデレ演技に萌える映画だった

「グリーンブック」★3.9(5点満点)

第91回アカデミー賞の作品賞に輝いた「グリーンブック」。3月1日にやっと日本公開となりました!

映画評論家の町山さんが10月ごろにラジオで紹介してから、ずーと気になっていた作品でした。あらすじ聞いただけで「何それ面白そう…」と密かにワクワク…。

しかし、アカデミー賞の受賞式後「この映画は“ホワイトスプレイニング”だ(白人が偉そうに説教をすること)」との批判もおこり、なにかと話題になっている作品でもあります。 では、「グリーンブック」についてあらすじや感想をまとめてみます。

あらすじ

 時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。

 

ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。

 

二人は、〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。

(公式サイトより引用)

 

"グリーンブック" について

この時期のアメリカ南部は、まだまだ酷い差別意識が残る地域でした。

映画内でも描かれていますが、例えば黒人は屋敷内のトイレではなく外にあるオンボロのトイレを使うよう言われたり、あるいはレストランで黒人は入店できないと断られたり…。

そこで、黒人が泊まれるホテルなどをまとめたのが「グリーンブック」でした。

監督・キャスト

・監督…ピーター・ファレリー

代表作:「メリーに首ったけ」「ふたりにクギづけ」など

・主なキャスト

トニー・“リップ”・バレロンガ …ヴィゴ・モーテンセン
ドクター・ドナルド・シャーリー…マハーシャラ・アリ
ドロレス・バレロンガ …リンダ・カーデリーニ

 

ヴィゴ・モーテンセンはこの作品のために14㎏も増量!誰だか分かりませんでしたw

ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや最近だと「はじまりへの旅」でも演技を評価されていましたね。

 

マハーシャラ・アリはこの作品で「ムーンライト」に続き、2度目のアカデミー賞助演男優賞を受賞しました。「ムーンライト」ではヤクの売人という役でしたが、今回はガラッと変わり、教養高い黒人天才ピアニストを演じています。

「グリーンブック」感想まとめ

普通に面白い。でも、普通からは飛び出てない。

ぶっちゃけて言います。これ作品賞をとるほどの作品でしょうか?(笑) 作品自体は笑いあり涙ありと、非常に良く出来ていると思います。

でも、なんというか…「優等生」って言葉が似合う作品でした。全てが平均よりは面白いけど、かといってめちゃくちゃ胸に残る作品でもない…。

 

2017年の「ムーンライト」、2018年の「シェイプ・オブ・ウォーター」は心の内からぐっと押し寄せる感動があったのですが…。正直、「グリーンブック」は何か深い感動は得られず…。「グリーンブックはコメディだからでは?」という問題ではなく、ただただ「まぁ普通に面白いね」って感想しか出ませんでした。

 

二人の俳優による演技は最高

※ここから少しネタバレ入ります。

 

とはいえ、主演二人による演技は最高です。絶妙な掛け合いがなんとも面白い。

 

ガサツで学もないけど、人情味あふれるトニー。

教養高く卓越したピアノの才能もあるが、どこか孤独なシャーリー。

ストーリー的には、この凸凹コンビが旅を通じて仲良くなるという王道的なものですが、主演俳優2人による素晴らしい演技により、何倍もドラマチックに仕上がっていました。

 

黒人の使ったコップを捨ててしまうほどの差別意識を持ったトニーが、旅をしていくうちにシャーリーを「黒人」や「ピアニスト」という枠に当てはめず、「彼はひとりの人間なんだ」ということに気がついていくんですね。

 

一方、シャーリーも自分の弱い部分もさらけだしても、「そういうこともあるさ」と自分を認めてくれるトニーに徐々に心を開いていきます。

 

この二人の友情は文句なしに素晴らしいです。絶妙なギャグの掛け合いも、声を出して笑ってしまうほど面白い。さすがはコメディの名手であるピーター・ファレリーです。

トニーの手紙をシャーリーが直すシーンは会場中笑ってましたね。

「”Deer”は鹿だ」(正しくはDear)がツボ。(笑)

まさかアリの演技に萌えるとは…


何より「グリーンブック」はドクター・シャーリーを演じた、アリの演技は本当に最高でした。助演男優賞も納得。ムーンライトも本当に良かったですが、今回はコメディ演技をも良い…!もう、アリが品よくしているだけで面白いんですよねw

 

予告でも使われている道中でケンタッキーフライドチキンを食べるシーンは、まじで最高!

手づかみでチキンにむしゃぶりつくトニーに対して、「フォークとナイフがないと食べられない!」ってオロオロしているアリがめちゃくちゃ可愛いし面白いw

さらにトニーが友人から「黒人と働くなんて…他にいい仕事があるぞ」と言われていたのを聞こえてしまったアリ。

すると、なんとホテルの部屋の前でトニーを待ち伏せて「給料も上げるから正式なマネージャーになってほしい」と急に提案し始めたりw

何その急なツンデレwww可愛いwww

 

そう、今作はアリの演技にとにかく萌える映画なのだ。

 

語弊があるといけないので一応言っておくが、ドクター・シャーリーは単なる黒人ピアニストというだけでなく、非常に複雑な背景を持っている。

小さい頃から音楽の教育を受けていため黒人としての文化に馴染みがなく、かといって白人のコミュニティには入ることも出来ない。

劇中でも「黒人でもない、白人でもない。どう生きるのが正解だ?」と悲痛な叫びをあげています。今回のマハーシャラ・アリはそんな難しい役を演じているんですね。

 

でもね、今回のアリは可愛い!

 

天才すぎるがゆえに孤独に悩み、それゆえ人との接し方も分からず不器用な形でしか心を開けない…。

「俺は辞めないよ」と言ってくれたトニーに、ニッコニコしながら自分の身の上話をしたりする姿が本当可愛い…。まさかマハーシャラ・アリに「萌え」という感情を抱く日がくるとは…。

 

ラストの黒人たちが集まる酒場で、自分を全部解放してピアノを弾く姿は泣いてもうた。本当に彼の音楽が観衆に認められた瞬間でした。

この役はマハーシャラ・アリ以外、思いつきませんね。品のある風格が本当に似合っていました…。

「グリーンブック」の批判について

「グリーンブック」は冒頭でも触れたように、「白人が黒人に偉そうに説教する映画」と批判され、さらには「アカデミー史上最低の作品賞」「クラッシュ以来の最悪の作品賞だ」

※「クラッシュ」…2005年公開のアメリカ映画で、第78回アカデミー賞の作品賞を受賞。ある1件の事件がきっかけでアメリカ国内の差別や偏見などをあぶり出していく作品。

 

アカデミー賞受賞式では、「グリーンブック」の受賞アナウンスがされると、黒人映画監督アン・リーが怒りを露わにし、また同じく黒人俳優でありブラックパンサー役を演じたチャドウィック・ボースマンも祝福せず…という事態に。

 

監督が白人ということもあり、黒人から見れば「ホワイトスプレイニング」と思われても仕方がないかもしれません。

 

最後に、このことについて個人的な感想をまとめておきます。

まず人種問題うんぬんを抜きにして、「2人の友情物語」とみるのであれば非常に良い映画でした。

ただ、この2人を扱うなら、人種問題については避けて通れないテーマだと思います。

 

監督は黒人・白人という枠にとらわれず、ただただ両者を一人の人間として扱い、2人の友情を描きたかったのでしょう。

とはいえ、途中途中で人種問題に触れてはいるには関わらず、なにか明確な答えがないまま終わってしまったのが釈然としないのです。勿論、事実に基づいた作品なので、それ以上のことは描きにくいのかもしれませんが。

 

比べる対象が間違えているかもしれませんが、そういった意味ではブラックパンサーは素晴らしかったと思います。

ブラックパンサーでは現状の社会情勢を踏まえてラストにある「答え」を明示しました。だからこそ、アメコミヒーロー映画でありながら、社会的な評価も得て、アカデミー賞にもノミネートされたのでしょう。

 

このテーマを扱うのであれば、監督なりの一つの答えが欲しかったなというのが正直なところです。

ただ、おじさん二人のロード―ムービーとしては最高です。ずっと二人の掛け合いを見ていたいw

 

普段アカデミー賞作品なんて見ないよって人も、これなら難なく見れるでしょう。

人種問題にあまりなじみない日本人でも、この作品を見ればアレコレと考えてしまいたくなるでしょう。

実際、劇場には若いカップルもけっこういてビックリしました。他のアカデミー賞作品にはほとんどいなかったのにwテレビで紹介されていて来たのかな??

 

なんだかんだ誰が見ても「面白かった」と満足できる作品なんじゃないかな。

「最近見たおすすめの映画は?」って聞かれたら、この作品名答えておけば問題ないと思います。