【エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ】個人的評価★3.8点(5点満点)
画像引用:https://www.cinematoday.jp/movie/T0024219/photo
『エイス・グレード 世界で一番クールな私へ』を見ました。
最近良作を連発しているA24制作、映画評価サイト「Rotton Tomatoes」で評価99%と驚異の高評価を得ている作品が、とうとう日本にも上陸!
そんな話題作『エイス・グレード 世界で一番クールな私へ』のネタバレ感想を書いていきます。
『エイス・グレード 世界で一番クールな私へ』のあらすじ
中学校卒業を1週間後に控える中、クラスで最も無口な子に選ばれてしまったケイラは、高校生活が始まる前に不器用でおとなしい自分を変えようと決意し、クラスメートとSNSを通じて仲良くなろうとする。
しかし、思いを寄せている男子にはどうアプローチすればいいかわからず、人気者のケネディには冷たくされ、お節介な父親にイライラしていた。
スクールカースト最底辺の女の子が、人気者になろうと四苦八苦するお話。
生まれた時からSNSが身近にある今の子どもたち。
そんな彼らの青春をポップに、そして”今しか体験できない痛み”を描いた作品です。
『エイス・グレード 世界で一番クールな私へ』監督・キャスト
■監督…ボー・バーナム
これが監督初作品だそうです。監督自身も16歳でYouTuberし、今ではコメディアン・俳優として映画やドラマに出演中。
まさにSNSの申し子とも言うべき人が、この作品を作ったのは何だか感慨深い。
■キャスト
ケイラ…エルシー・フィッシャー
マーク…ジョシュ・ハミルトン
オリヴィア…エミリー・ロビンソン
ケイラ役の子は、6歳からキャリアをスタートし「怪盗グル―」シリーズで声優を務めているそう。
インディー映画とあり、そこまで有名俳優は起用していませんね。
とはいえ、映画の素晴らしさは各界から認められていて、ケヴィン・ベーコンやリース・ウィザ・スプーンといった多くの有名人たちがラブコールを送られるほど!
【エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ】のネタバレ感想
SNS世代を生きる若者たちのリアル
この作品の醍醐味は、SNS世代の彼らの青春はどのようなものなのか。
それをSNS世代ではない私たちが垣間見れることでしょう。
まず前提として話しておきたいのは、私はSNS世代…ではないと思います。
ググってみると、SNS世代は「生まれたときからインターネット環境にさらされている世代(概ね1980年以降に生まれた若者)」と定義されているようです。
私の場合、SNSに初めて触れたのは高校卒業時のmixiが初めてで、大学時代にようやくTwitterに登録しています。
つまり、中高生の思春期の間にはSNSを利用していません。
私のときに流行ったのは個人HPでしたね(HTMLでつくるやつ。なつかし~)。
ですので、見ている最中も「うんうん!分かる!」ってよりは「今の子って大変だな…」って感情が勝りました。
とはいえ、誰しもが通る青春時代の痛みを「やめてー!!!」と目を覆いたくなるほど見せつけてくれる作品でした。
とにかくケイラが痛すぎて痛すぎて。
本当は思春期ニキビだらけなのに、加工でツルツルの肌にしたり。
本当はぽっちゃりなのに、モデルみたいに細くさせたり。
まぁここまでは分かりますよね。私もニキビ隠しのために親のファンデ塗りたくったし(笑)
問題はそれをSNSに投稿して、承認欲求欲を満たしていくこと。
自称YouTuberの彼女は、加工しまくった自分を通して「自分らしくいるには」とか「自信をもつのは大事!」とか、薄っぺらい自己啓発系の動画を投稿しています。
ただし、登録者は0人、再生数も大体0回。
しかも、動画内ではキラキラ女子を演じているけど、学校ではぼっち。地獄すぎるでしょ、こんなの。
無論、私も思い出すと「あぁあぁああ~!」となるこっぱずかしい過去が沢山ある。
ただし、それらが誰でもアクセスできるようなSNSやネット上には残してはいません。
それだけが救いです。
とはいえ、これがSNS世代のリアルなのでしょう。
なりたい自分も、言いたいこともSNSならできる。
それは幸せなのか、不幸なのか。私は正直分かりません。
そういうSNS世代のリアルを描き切った、今までにはない新たな青春ムービーでした。
なりたい自分になるには痛みも伴う
一番きつかったのは、リア充同級生の誕生日パーティーのくだり。
ケイラはスクールカーストのトップに君臨するようなリア充女子の誕生日パーティーにまぬかれます。
といっても、両親同士が知り合いなだけで、リア充女子も「仕方なく」招待しているわけで。
ケイラはパーティーに行く前、動画内でこんなことを語りかけます。
「本当は誘いたくなかったけど、不思議ちゃんをパーティーに誘ってみたの(自分のこと)。
そしたら、その子が凄く面白くて!あなたも勇気をもって話してみたら、けっこうおもしろい子!って分かってもらえるかもよ(自分の願望)」
しかし、実際パーティーに行ったら、誰もケイラを見もしないんです。
「何こいつ?」的な視線を送る訳でもなく、本当空気みたいな扱いをされるんですよ。学生時代にこういう経験をしたわけでもないのに、本当に息苦しくなるシーンでした。
今やアプリでちょっと加工しただけで「なりたい自分」になれちゃうし、用意されたプラットフォームを使えば簡単に自己発信が出来てしまう。
こんな世の中なら、多感で不安定な思春期の子たちが「リアルな自分」と「SNS上の自分」で悩むのは当然なのかもしれません。
ちなみに、インスタは整形フィルターは禁止にする動きを発表しています。
今後はSNSは18歳以下は使用禁止!みたいな規約出てきてもおかしくないですね。
現実世界は、ボタン一つで簡単に理想の自分にはなれない。
理想を追うには色んな痛みや苦しみもあるし、そういう思いを経て私たちは大人になっていく。
ケイラも劇中で高校生の男の子に性的な目で見られ、誘いを断ったら「調子のってんじゃねーよ」的なことを言われてしまい、ひどく傷つきます。
この男がクソなのは確かですが、時にはこういう痛みを経験することだってあります。
大事なのは、その痛みを抱えながらも、その痛みをバネにして前に進むこと。
ケイラもある人の助けをもとに前に踏み出し、ちょっと成長します。
「ありのまま」を愛してくれる人は必ずいる
この物語の鍵となる人物がいます。それは、ケイラの父親です。
ケイラの母親は家を出ていき、父親が男手一つで育ててきたためか、ケイラに対してやや過保護ぎみなご様子。
とはいえ、思春期特有の「親父うざいんですけど!」と理不尽にキレる娘にどう接したらいいのか分からない。
もう世のお父さんは共感しまくりのキャラクターではないでしょうか(笑)。
この親子の描写は、女性の私としては「お父さんごめんね…」となるシーンが多々ありました(笑)。
私も思春期のころは母親とは話すけど、父親とは本当に話せなくて。
何で?って言われても分からないんですよ。でも、話したくない(笑)。
大人になってからのほうが普通に話せるし仲いいです。女性ってこういうタイプけっこういると思いますけど。
私も父親と二人になると、ガラケーいじりまくってたなぁ…と思いだしました。
あのときの父親も、この映画のように悲しい顔してたんだろうなぁ。本当ごめんね…。
そして、映画の終盤。
高校生の男の子とのトラブルでようやく目が覚めたのか、ケイラは「投稿はこれで終わりにする。私は本当はみんなにアドバイスできる立場じゃない」とyoutuber引退を宣言。
そして、色んな過去を断ち切り、新しいスタートをきろうとしたケイラは小学生の時に埋めたタイムカプセルを父親と焼きます。
父親が「これ何を燃やしているの?」と聞くと、ケイラが「私の夢とか希望」と答えるシーンが笑える(笑)。
父親が何て返せばいいか迷っているあの表情がいい(笑)。
そしてケイラは涙ながらに「私みたいな娘いやだよね。恥ずかしいよね」と呟きます。
すると父親は焦りながらも、ケイラにやさしく語りかけます。
「とんでもない!パパはお前に勇気をもらっている。
お前は俺が教えてもないのに、ちゃんと育ってくれた。
パパは幸せだよ」
ケイラは疎ましく思っていた父を抱きしめ、二人は親子の絆を取り戻します。
このシーン、私もうるっときましたが、隣の方は号泣してましたね(笑)
見た目的には、もう既に子どもがそこそこ大きくなっていそうな方でしたが。
SNSでどんなに自分を着飾ろうと、それは本当の自分ではありません。
それでも、ありのままの自分を愛してくれる人は必ずいるよとこの映画では語りかけてくれるのです。
SNSの「いいね!」だけが、この世の全てじゃないよと。
これをYouTuber出身が言うんだから説得力ありますよね(笑)。
なおかつ、このメッセージもすごく優しさにあふれていて、よくある説教臭さもない。
今、実際にこういう問題に悩んでいる子どもにとって、この映画はかけがえない1本になるんじゃないかな。
個人的には前評価ほどグッとくるものではなかったけど、今SNSにどっぷり浸かっている中高生の子やその子たちの親世代にはダイレクトに響く作品だと思います。
そういった人たちの感想をぜひ見たいと思いました。
90分弱とコンパクトで見やすいので、お子さんたちにもオススメです!
映画を見ていて思ったどーでもいいこと
★銃を持った人が来たらどう逃げるか?的な訓練をしていてビビった。
こんなの中学校でやるなんて狂ってるでしょ。銃社会怖すぎ。
★みんなスマホ触りすぎw(演出かもしれないけど)卒業式の入場前にもいじるの?w
★高校生グループがショッピングモールのフードセンター的な場所で語り合う。
これってどこの国も一緒なのかな(笑)。
私も安いフードとドリンクで何時間もたべってたなぁ。
★私服で通学するので、その子の個性なりセンスがダダ漏れで辛そう。
これなら制服をアレンジしてるくらいがいいかも…。
個性を出すのと、制服を着て没個性になるのなら、どちらがいいんだろう。